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大阪高等裁判所 昭和52年(ラ)120号 決定

抗告人(被告)

関西電力株式会社

右代表者代表取締役

森岡俊男

右代理人弁護士

吉川大二郎

ほか一四名

相手方(原告)

和田卓

ほか三七六名

右代理人弁護士

鬼追明夫

ほか二名

主文

一、原決定中、原決定添付別紙(一)4記載の文書の標目のうち(1)昭和四五年一月一日から同年九月末日までの岬町平山で測定した風向、風速の測定記録、および(2)同(一)5記載の測定記録を、各インプツトした磁気テープおよびこれより各データを取出すのに必要不可欠な資料の提出を命じた部分を取消し、右(1)部分につき相手方の文書提出命令の申立を却下する。

二、抗告人のその余の抗告を棄却する。

理由

一抗告の趣旨と理由

別紙記載のとおり。

二当裁判所の判断

(一)  抗告理由補充(その二)一について

抗告人は本件文書提出命令申立書には証すべき事実の記載がなされていない趣旨の主張をしているので判断する。

文書提出命令の申立には証すべき事実を明らかにすることを要するところ、相手方らの文書提出命令申立書には証すべき事実として「被告(抗告人)第一火力から排出された汚染物質によつて岬町及びその周辺の大気環境が汚染された事実」と記載されているにすぎず大気汚染の測定結果たる数値等につき具体的記載がないことは抗告人主張のとおりである。しかしながら、過去長期間にわたり企業工場から排出される汚染物質により多数の周辺居住住民がその健康を侵されたとして、本件のようにこれによる損害の賠償を求め、あるいは企業活動の差止等を求める訴訟を提起する場合において、右住民らが過去長期間にわたり排出された汚染物質による大気汚染の数値を、訴提起前に蒐集することは事実上不可能であり、従つて、その測定記録を所持する企業に対し、具体的な大気汚染の数値を示して右記録の提出命令を求める申出を行なうべきことを要求することは不可能を強いるか、若しくはずさんな根拠なき数値を主張させる結果を招来するおそれが生ずるのであるから、このような場合においては、大気汚染の具体的数値を立証事実に掲げず、前示のとおり抽象的事項を掲げるに過ぎないときにおいても、このような証拠申出をもつて直ちに不備違法であるというべきではなくこのように解することが公平の原理にも適うものというべきである。よつて右抗告理由は採用することができない。

(二)  抗告理由一、三、抗告理由補充(その一)二ないし四、同(その二)二、三について。

民訴法三一二条にいう文書とは、文字その他の記号を使用して人間の思想、判断、認識、感情等の思想的意味を可視的状態に表示した有形物をいうところ、一般的にみて磁気テープ(電磁的記録)自体は通常の文字による文書とはいいえない。しかし、磁気テープの内容は、それがプリント・アウトされれば紙面の上に可視的状態に移しかえられるのであるから、磁気テープは同条にいう文書に準ずるものと解すべく、本件測定資料(原決定添付別紙(一)記載のうち同(二)記載の資料を除く資料)中の測定記録をインプツトした磁気テープは、多数の情報を電気信号に転換しこれを電磁的に記録した有形的であつて、それをプリント・アウトすれば可視的状態になしうるから、準文書というべきであつて、磁気テープがその内容を直接視読できないこと、あるいは直接視読による証拠調の困難なことをもつて、その準文書を否定することができない。即ち、磁気テープにインプツトされた情報・記録(本件においては単なる情報ではなく記録である)の内容を、人間の認識に供するためには、専門家により、知ろうとする情報・記録の内容形態に応じたプログラムを作成し、当該磁気テープに適合したコンピユーター装置を用いて、プログラムの指示した形式に従い、数字、アルフアベツト、カタカナによりプリント・アウトする等の方法によるほかなく、この限りにおいて、磁気テープそれ自体は、紙面等に文字を記載して作成された通常の文書のように、その物自体において文書としての内容形態を視読しうるものとは異なることはいうまでもない。しかしながら、種々の情報ないし記録を磁気テープにインプツトして保存する方法は、近年急速に発達した技術の所産であり、大企業等においてこの方法が急速に採用されているのは、膨大な情報・記録を極度に圧縮して収録しうる利点にあると考えられるところ、このような方法を採用して情報・記録を磁気テープにインプツトした者としては、その当初から、インプツトした情報・記録を将来利用する必要が生じたときは、これに要するプログラムを作成(記録の選択、配列、演算等、専門家の意思に基づいた指定を行うこと)し、このプログラを使用し、磁気テープに適合したコンピユーター装置を用いてアウトプツトすることを当然のこととして予定し(抗告人も従来から必要に応じこのような使用をしていることは、抗告理由の記載からみて明白である)、このようにしてプリント・アウトされたときにおいて、それは通常の文書として顕出されるに至るのであつて、ここに磁気テープ利用の本来の効果が生ずるのである。情報ないし記録を磁気テープにインプツトするのは、将来必要となつた場合にこれを見読可能なものとして紙面等に顕出することを目的としているものであつて、インプツトした情報・記録等を見読不能の状態で保存することのみを目的としているものではないから、これをインプツトした者は、将来訴訟上相手方との間において、その者の要求により磁気テープにインプツトされている情報・記録を相手方に示す必要が生じ、裁判所からその提出を命じられた場合には、単に磁気テープを提出するのみでは足りず、少くともその内容を紙面等にアウトプツトするに必要なプログラムを作成してこれを併せて提出すべき義務を負つているものというべきである(提出された磁気テープおよびプログラムの保管、その証拠調べについては、当該裁判所の訴訟指揮に委ねられるべきものであるが、保管については提出者をしてこれを行なわせることも可能であり、又証拠調べについては鑑定人をして鑑定させるのも一方法であると考えられる。この場合の鑑定費用ないしアウトプツトした結果を記載した書面(写し)の作成提出に要する費用は、書証として提出する者が負担すべきであろう。)。

ところで、民訴法三一二条三号後段にいう挙証者と所持者との法律関係につき作成された文書とは、両者間に成立する法律関係それ自体を記載した文書だけでなく、その法律関係の形成過程において作成された文書やその法律関係に関連のある事項を記載した文書も含むと解すべきところ、本件における相手方ら大部分の主張は抗告人の不法行為等による抗告人第二火力発電所の運転差止を求め、一部の者が抗告人第一火力発電所から排出された大気汚染物質により慢性気管支炎等に罹患したとして不法行為による損害賠償を請求するものである(抗告人はこれを争わない)から、右主張がなされていることを前提として、本件資料が同条三号後段の法律関係文書にあたるかどうかについて考えてみるに、本件資料中の番号1・5は大気汚染と、番号3は悪臭ないし大気汚染と、番号2・4は大気汚染の有無・程度と関係をもつものであり、以上いずれも公害による不法行為の法律関係と関係をもつもの、いいかえると、大気汚染とこれによる付近居住々民たる相手方らの損害発生という法律関係に関係をもつものと解せられるから、本件資料は同条三号後段の法律関係文書に準ずるものとして、文書提出命令の対象になるものということができる。なお、本件資料のうちの一部は同条一号の文書にも準ずるものと判断しうることは、原決定理由第二の三の説示と同じであるから、これをここに引用する。

文書提出者において文書を提出すればその間当該文書を使用できなくなり、業務の遂行に支障をうけることもありうるが、具体的に特定し理由を挙げて立証しないで、たんに抽象的に業務の遂行に支障を生じうるとの理由をもつて、当然に文書提出命令を拒否することは許されない。また、本件磁気テープ中には抗告人の内部関係において秘密扱としているものが含まれていることも考えられないではないが、文書提出命令の制度の趣旨とくに公益性との比較均衡において考量するときは、抗告人において秘密部分を特定し、理由を明示する等して提出命令を妨げる特段の事情を立証しない限り、たんに磁気テープの中に抗告人が企業の内部において秘密扱にしているものが含まれていることをもつて、当然にその提出を拒む理由とすることができない。のみならず、抗告人は前示プログラムを作成するにあたり、右秘密扱部分をアウトプツトしえないものを作成することも可能であるから、いずれにしても右抗告理由は採用することができない。

(三)  抗告理由二、抗告理由補充(その一)一について。

抗告人は、原決定添付別紙目録(一)4記載の地点のうち岬町平山で風向、風速の測定を開始したのは昭和四五年一〇月であつて、それ以前の昭和四五年一月一日から同年九月末日までの同所での各測定記録をインプツトした磁気テープを所持していない旨主張し、これを所持していることを認めるに足る証拠がない。したがつて、本件提出命令中、右部分の磁気テープおよびこれより各データを取出すのに必要不可欠な資料の提出を命じた部分はその余の点について判断をするまでもなく失当であるから、その限度において抗告は理由がある。

次に、抗告人は、同目録(一)5記載の測定記録について、これをインプツトした磁気テープを所持していない旨主張し、本件記録によれば相手方からも右磁気テープの提出命令を求めていない(相手方は同測定記録の提出を求めているにすぎない)から、本件提出命令中、右磁気テープおよびこれより各データを取出すのに必要不可欠な資料の提出を命じた部分は、その余の点について判断するまでもなく失当であるから、その限度において抗告は理由がある(なお、右測定記録の提出を求めた点については、原審はなんら判断をしていないというべきである)。

なお、抗告人は原決定が毎月の記録の提出を命じたのは失当である旨主張するが、原決定はこのような記録の提出を命ぜず、原記録たる磁気テープの提出を命じているにすぎないから、この点に関する抗告理由は、理由がない。

(四)  そうすると、相手方らの文書提出命令の申立を一部認容した本件文書提出命令は、右(三)の説示の限度において失当であるから、原決定を右の限度において取消し、右取消し、右取消部分の一部につき相手方らの文書提出命令の申立を棄却し、なおその余の抗告は失当であるからこれを棄却することとして、主文のとおり決定する。

(下出義明 村上博巳 尾方滋)

【抗告の趣旨】

原決定第一項を取消す。

相手方ら(原告ら)の申立を却下する。

との裁判を求める。

【抗告の理由】

一原決定は、同決定別紙(一)の1ないし5掲記の測定記録をインプツトした磁気テープを文書(準文書)と断定し、これについて被告会社に提出を命じた。しかしながら、各種情報をインプツトしたコンピューター用磁気テープが果して民訴法上の文書または準文書に該当するかどうかについては、法令に定めのないことは勿論、判例・学説においてもほとんど触れるところのない、現代社会の所産ともいうべき全く新しい問題であり、その訴訟手続上の取扱いについても解明を必要とする数多くの問題が存することはいうまでもない(その幾つかは原決定添付の「被告の意見」第七項にも示されている)。

従つて、その文書性を認定するに当たつては、少なくとも充分首肯しうる理由を付し、これに伴う訴訟手続上の幾多の疑問に対する解決方法を示すことが、新しい法規現象に対処する裁判所としての当然の責務というべきであろう。しかるに、原審は、これらの点につき何らの理由を示すことなく、全く恣意的ともとれる形で磁気テープを文書と断定し、その提出を命じたものであつて、その不当性は覆うべくもない。

二原決定は、さらに文書概念の把握について重大な誤りを冒している。

原決定は、理由第二項において「被告か右文書(注……別紙(二)記載のもの)を除く別紙(一)に記載の各文書(以下本件文書という)を所持することは被告の争わないところである」としているが、被告会社は、測定記録を、チヤート等の測定原記録(既に廃業して存在しないものもある)および磁気テープにインプツトした形態でそれぞれ保有していることを認めたにとどまり、それらが文書であることを認めたわけではない。およそ文書とは、人間の意思、判断、認識、感情などの思想的意味を表示する有形物であつて、思想的意味内容それ自体でないことはいうまでもない。そして、本件測定記録が仮りに右の如き思想的意味内容を有するものであるとしても、測定記録それ自体は情報としての観念的存在たるに過ぎず、文書性を云云する対象たりえないこともまた明らかである。しかも本件各測定記録は、他の多くの異種の情報データと共に同一の磁気テープに混在的にインプツトされており、さらに同種の測定記録もはらはらに多数の磁気テープに分散してインプツトされているのであつて、原決定別紙(一)の各項目ごとに独立した存在形態をとつているわけではない。しかるに、原決定は、その理由第二項において、一部を除く別紙(一)記載の各文書(その記載によればいずれも「測定記録」となつている)を「本件文書」と定義し、さらに第五項において「本件文書は他の文書と共に磁気テープに混入されているから本件文書を取出するのに必要な資料も同時に提出の義務がある」としているのであつて、この記載からすれば、原審は、明らかに情報としての観念的存在たる測定記録自体をとらえて「本件文書」とする誤つた認識に立つものと断ぜられるをえない。

三原決定は、本件測定記録(その文書性の問題はしばらくおくとしても)は、民訴法第三一二条第三号後段(一部については重畳的同条第一号)に該当すると認定しているが、その理由とするところは、原審において被告会社が詳細主張した如く、解釈論の限界を逸脱した民訴法の不当な拡大解釈に基づくものであつて、許されるところではない。

以上

【抗告理由補充(その一)】

一原決定は、原告らが申立てていない事項を認容する誤りを侵している。その一つは、降下ばいじん量の測定記録について磁気テープの提出を命じたことである。被告会社は降下ばいじん量をインプツトした磁気テープは所持していないし、原告らも磁気テープの提出を求めていない。いま一つは、毎月の測定記録の提出を命じたことである。原告らは毎月の記録の提出を求めていない(昭和五二年三月一二日付文書提出命令申立事項変更書参照)。

なお、被告会社が、原決定別紙(一)の番号4記載の地点のうち岬町平山で風向、風速の測定を開始したのは昭和四五年一〇月であり、また同番号5記載の地点で降下ばいじん量の測定を開始したのは昭和三八年一一月であつて、それ以前の各測定記録は被告会社において所持せず、したがつてこれをインプツトした磁気テープも存在しない(降下ばいじん量については、それ以降の分も磁気テープにインプツトされていない)。この点については、原審において被告会社として明らかに主張してはいないので、ここに改めて主張を補充する次第である。

二原決定は、各種測定記録をインプツトした磁気テープの提出を被告会社に命じたが、磁気テープは、文書、準文書のいずれにも該当しない。

原決定は、同決定別紙(二)の測定記録を除く別紙(一)の1ないし5掲記の測定記録をインプツトした磁気テープを、何らの理由を付することなく文書(準文書)と断定し、被告会社にその提出を命じた。しかしながら、元来、民訴法の解釈上文書(準文書)とは、人間の思想、判断、認識、感情等の思想的意味を文字または記号等を用いて直接見読可能な形で表示した有形物をいうとされているのであつて、その点からすれば、磁気テープは、多数の情報を電気信号に転換しこれを電磁的に記録する物であり、記録済の磁気テープを見ても、その内容を直接見読できないことはいうまでもないから、文書(準文書)としての要件を欠くことは明らかといわねばならない。

すなわち、磁気テープにインプツトされた情報の内容を人間の認識に供するためには、専門家により、知ろうとする情報の内容形態に応じたプログラムを作成し、その磁気テープに適合したコンピユーター装置を用いて、プログラムの指示した形式に従い、数字、アルフアベツト、カタカナによりプリント・アウトするか、ブラウン管に投影する方法によるほかはないのであつて、磁気テープに内包された電磁的記録を見読可能な形とするためには、コンピユーター装置による電気信号への転換を媒介とする必要があるのみならず(それだけでは、マイクロフイルム読取りの光学装置と同列に考えることもできようが)、取出そうとする情報の内容に応じて、記録の選択、配列、演算等人間の意思に基づいた指定を行なうこと(プログラムの作成)が必要であつて、紙面に文字を用いて作成された通常の文書の如く、その物自体において文書としての内容形態が特定されているものとは、大いに性質を異にするのである。

すなわち、磁気テープに内包されている情報の内容形態は、通常の文書の如く一義的に特定されているものではなく、これを取出そうとする人間の意思に従つて、きわめて多様なバリエイシヨンをもつものであつて、このような性質を有する磁気テープが、通常の文書と同様書証としての証拠調に親しむものかどうかは、きわめて疑問といわねばならない。

そもそも民訴法は、証拠調=情報の顕出の方法として、情報の存在形態およびそれから得られる証拠資料の区別に応じて、証人尋問、鑑定、書証、検証、当事者尋問の五種の方法を定めている。この内、書証は、裁判官が文書を見読することにより、そこに特定的に表示された意味内容を証拠資料にとるための証拠調であり、逆にいえばその対象をなす文書が、特定的に表示された内容を直接見読することが容易な情報媒介物であるがゆえに、証拠調の方法としては裁判所に文書を提出し裁判官の見読に供するという簡易な方法が定められているのである。しかしながら、磁気テープについては、前記の如く、電磁的記録の内容を、特定的に表示された形のものとして見読することは不可能であつて、その内容を見読可能に転換するためには、記録内容の選択、配列、演算等の指定(プログラムの作成)という人間の意思的行為と、その磁気テープに適合したコンピユーター装置の働きの介在が必要であり、それによつて初めて一定の内容を特定的に表示した記録文書が生み出されるのである。このようにして作り出された記録文書は、電磁的記録に基づいて作成されたものではあつても、文書としての内容、配列は電磁的記録自体と完全に重複するものではなく(したがつて電磁的記録の謄本とはいいえない)、これとは別個の新たな文書であつて、これを見読することは、電磁的記録自体の証拠調としての書証とはいいえないことは明らかである。

磁気テープによる電磁的記録の証拠調に関してほとんど唯一の論文ともいうべき、竹下守夫「コンピユータの導入と民事訴訟法上の諸問題」ジユリスト四八四号三一頁以下は、右に述べた点の考察を欠くために、きわめて軽卒にも「プリント・アウトされた内容は、そつくりそのまま電磁的記録から紙の上に可視的状態に移しかえられたものにすぎない。そこで、電磁的記録自体も、人の思想を内容とし、ただそれを通常の文字ではなく、コンピユータ特有の記号によつて表現しているにすぎないと考えられ、その意味で、電磁的記録は「文書」であると言いうる。それは、速記のための記号で記された文書と異なるところがなく、また、マイクロ・フイルムとも本質的には異ならない」とする誤りを冒している。コンピユーターの磁気テープは、前記の如く、人間の意思に基づく内容配列の指定なくしては、電磁的記録の内容を特定的に取出すことが不可能である点において、速記文字による文書やマイクロ・フイルムとは決定的に相違するものである。

なお、電磁的記録である点において共通性を有する録音テープについて、ドイツにおける多数説は文書性を否定し、その証拠調は検証によるとしているのであつて、コンピユーターの磁気テープに関する証拠調の方法についても、さらに慎重な検討を必要とすることは明らかであり、電磁的記録の内容に関しては、専門の知識経験を用い、具体的判断に基づいて特定の情報をその中から顕出し、これを裁判所に提供することが、証拠調のために絶対必要であることに想いをいたせば、コンピユーターの磁気テープの証拠調は鑑定によるべきが相当との結論に到達せざるをえないであろう。

以上に述べたところにより、何らの理由をも付することなく磁気テープを文書と断定し、被告会社に対してその提出を命じた原決定が、その点において既に決定的誤りに座するものであることは明らかである。

三原決定は磁気テープの提出を被告会社に命じたが、磁気テープはその内容を直接見読できないばかりか、その他にも通常の文書にはない、いくつかの技術上の特性があり、提出命令の可否の決定に際しては勿論、命令の内容を定めるに際しても、解明を加えておかなければならないいくたの問題点が存するのである。ところが原決定は何ら理由を付することなく磁気テープの文書性を認定したばかりか、被告会社が磁気テープの技術的特性に由来する民事訴訟手続上の問題点についてそのいくつかを指摘したにもかかわらず、これに対しては「何れも対策の考えられることであつてこれを以て提出を拒否する理由とはならない」と述べるのみであつて、考えられる対策とは具体的に何であるのか、その対策は裁判所・被告会社のいずれがとるべきものであるのかに関しては、実質的説示を一切行なわないまま原告らの申立を認容した。コンピユーター用磁気テープは近年著しく発展、普及してきたものであつて、民事訴訟手続上これをどのように取扱うべきかについては、未だこれに触れた判例、学説がほとんどない法律解釈上の全く未開拓の領域である。このような新たな法規現象が訴訟上の問題として生起した場合には、その問題点に対する具体的解決方法を明示するのは裁判所の当然の務めといわねばならない。

原決定は、被告会社が所持しているコンピユーター用磁気テープについて、そのコピー(電磁的記録そのものをデユプリケートした複製磁気テープ)ではなく所持している磁気テープそのものを提出するよう命じているが、これには以下に述べるような問題が存するのである、これらの問題点について具体的対策が示されない以上、被告会社としては、安んじて原決定の命令に従うことはできない。原決定は、文書が民訴法第三一二条三号後段に該当するか否かについては「証言拒絶権との比較からみてもその提出によつて、個人や企業の秘密、公共の利益、直接にも間接にも関係のない第三者の利益、当事者の利益が不必要に侵害されることを防止する必要があるのでこれらを文書の性質と共に総合して決するのが相当である」と述べているが、以下に述べる問題はまさに原決定が総合判断の要素として掲げている事項に該当するものばかりである。これについての対策を具体的に示しえないのであれば右各要素を総合して判断する以上、その結果としては、原告らの申立を却下することこそ相当であるということになろう。

(一) 被告会社では、日常業務のために本件磁気テープを用い(本件測定記録は、数多くの磁気テープに分散して記録され、またその各テープには他の多くの業務上の資料も記録されており、本件測定記録はその中に同居しているのである)、コンピユーターに各種の計算、分析を行なわせ、そのアウトプツトを資料に各種の調査、研究を行なつているのであつて、被告会社が所持する磁気テープは、被告会社において常時所持しておく必要のあるものである。したがつて、もし原決定の命ずるところに従い、これをそのまま提出すれば、被告会社は右磁気テープを使用できなくなり、日常業務の遂行に重大な支障を被ることになる。

(二) 本件磁気テープのなかには、前記の如く原告らが申立の対象としていない各種データが申立対象の測定記録とともにインプツトされており、申立対象外のデータのなかには被告会社が秘密扱としているものが含まれている。原決定は申立対象外のデータを含む磁気テープの全体を裁判所に提出するよう命じているのであるが、同時に磁気テープよりデータを取出すのに必要不可欠な資料(ただしこの資料とは具体的に何を指すのか判然としない)の提出をも命じているので、申立対象の測定記録のほかに、被告会社が業務上の秘密としているデータを含む申立対象外の各種データまでも原告側に公開され、あるいは法廷に顕出されることも危惧されるわけであり、仮りにそのようなことになれば被告会社の利益は著しく損われることになる。一般の文書の場合にあつては、申立に関係がなくかつ法廷への顕出を差し控える必要のある記述部分については、切り離すとか目かくしを施すとかいつた方法がとりうるが、磁気テープ自体を提出する場合にあつてはそのような便宜的な方法はない。

(三) 磁気テープは長尺(一般に一、二〇〇フイート(約三六〇メートル)、二、四〇〇フイート(約七二〇メートル)のものが使用されている)のテープの上に磁粉を塗布して作られており、その基本原理および外観は一般に用いられている録音テープに類似している。しかし磁気テープの場合は、その電磁的記録内容は数字、アルフアベツト、カタカナの電磁的記号に転換した情報であり、単位長さに当りインプツトできる情報量が多く(一センチメートル当り三〇〇ないし五〇〇字)、かつコンピユーターにかけて使用する場合は高速回転させる等録音テープとは相当異なつた性格を有し、僅かばかりの塵埃が付着しあるいは傷がついても各種のトラブルが生じうるので、録音テープとは比較にならないほど厳重な維持、管理を要するものである。磁気テープは電磁的シヨツクを受け、あるいは塵埃が付着したりすると、テープ上の磁性が微妙に変化する等して記録内容が変化したり読取り不能となることがあるから、磁性のあるものに近づけないようにするとともに、塵埃が付着しないよう清潔な場所に保管しかつそのような場所、条件のもとで使用しなければならない。また温度、湿度の管理にも十分留意しなければならず、これを怠つたときにも、内容が変わつたり読取り不能となることがある(被告会社においては、年間を通じ温度、湿度をほぼ一定に保ち、かつ塵埃の進入を防止するための設備を施した特別の保管場所に磁気テープを収納、保管している)。また磁気テープは、コンピユーターを操作することにより、その記録内容を消去したり、その痕跡を一切止めることなく全部または任意に選んだ一部のデータを他のデータに変換できるという特性も有している。

被告会社が所持する磁気テープは被告会社の貴重な財産であるから、その提出を命ずる以上、裁判所としては磁気テープの滅失および右のような各種の毀損を完全に防止するための保障措置を準備しなければならないといえよう。

(四) 被告会社において、その所持する磁気テープを基に原告ら申立の対象としている測定記録のみをインプツトした磁気テープのコピー(複製テープ)を作成してこれを提出することとすれば、前述の問題は一応解消する。しかし、裁判所に提出するための磁気テープコピーを新たに作成することまで文書提出命令の範囲に入るかどうか自体大いに疑問であるし、仮りにそのようなコピーを作成するとしても、そのためには新たにプログラムを作成しコンピユーターを用いる必要があるほか、できあがつたコピーについて正確に転写できているかどうかを厳格にチエツクすることも必要となり、これらにはかなりの手間と多額の費用を要することになる。したがつて仮りに右のような磁気テープのコピーの提出を命ずるのであれば費用負担の問題も生じるのであるが、民事訴訟費用等に関する法律にも、これに関する規定は全く存しないのである。

四磁気テープを裁判所に提出することに伴う問題点のいくつかを右に述べてきたが、次に磁気テープを裁判所に提出した場合、裁判所はこれについてどのような形で証拠調を行なうのかということが問題となる。敢えて言うまでもないことであるが、およそ文書提出命令に基づく文書の提出は、裁判所が行なう証拠調のために裁判所に対して行なうものであつて、挙証者が行なう立証活動のため挙証者に対して行なうものではない。

磁気テープは、前述のとおりその内容を直接閲読できないものであるから、裁判所は磁気テープ自体の提出を受けても、それだけではその内容についての証拠調はできない。その証拠調は、裁判所においてコンピユーターを用いその電磁的記録内容に従つたアウトプツト文書を作成するか、あるいはその内容をブラウン管に投影する方法をとり、見読不能な記録内容を見読可能なものに転換して初めて可能になるのである。現在裁判所にコンピユーター装置が備え付けられそのような作業が容易になしうるという態勢にあるならばともかく、そうでない以上、磁気テープはこの意味でも文書提出命令の対象としてなじまないものといわざるをえない(この場合、裁判所はアウトプツト文書の作成作業を公正な第三者をして行なわせるという方法も一応考えられるかも知れないが、仮りに原審がそのようなことを考えて提出を命じたのであれば、先に問題点として被告会社が主張した事柄についての具体的な保障的措置、対策を明示すべきである)。

さらに、先にも述べたとおり、文書提出命令に基づく文書の提出は裁判所が行なう証拠調のため裁判所に対して行なうものであつて、挙証者の立証のために挙証者に対して提出するものではないから、裁判所がその内容について直接証拠調ができないからといつて、アウトプツト文書を作成させる便宜の取扱いとして、記録謄写の名目の下に磁気テープそのものを挙証者に交付し使用させるようなことが許されないのは当然である。万一、そのようなことが許されたとすれば、前述のとおり磁気テープは保管の状況如何によつてはその内容が変わりうるものがあるのみならず、その内容が変換される危険性も存するから、裁判所の手をはなれた後は、その内容が提出されたときと同じかどうかは全く確認のしようがなくなり、かえつて無用の論争を惹起することになりかねないことになる。法律上かかることが許されないことは自明のことだと信ずるが、原決定が磁気テープをめぐる問題について一切触れていないので、杞憂と思いながらも敢えて念のため申し述べる次第である。

なお、原決定が、本件測定記録が民訴法第三一二条三号(一部については同条一号)に該当するとしたことが不当である理由については、改めて書面を提出する予定である。

以上

【抗告理由補充(その二)】

本件測定記録に関する磯気テープが民訴法三一二条三号(一部については同条一号)に該当するものでないことについては、既に原審における意見書および意見補充書において詳細に論じたところであり、とくに新たに付加すべき主張は存しないが、原決定の理由に示された判断があまりにも杜撰でありかつ誤謬にみちているので、これを指摘し、抗告人の主張の正当性について敷衍するため本書面を提出する。

一証拠は、要証事実との関係を明確にするため証すべき事実を表示して申し出なければならない(民訴法二五八条)。文書提出命令の申立についても要証事実との関連が問題となる。そこで民訴法三一三条は、文書の表示、文書の趣旨とともに「証すべき事実」を明らかにすることを要求している。原告らは本件申立において「被告第一火力から排出された汚染物質によつて岬町およびその周辺の大気環境が汚染された事実」を証すべき事実として掲げている。原告らが証すべき事実として挙示する右事実は、本件の本案訴訟における抽象的な究極的立証命題の一つであつて、本件申立に当たつて明らかにすべき証すべき事実には当らない。民訴法三一三条四号の証すべき事実とは、具体的な事実を指し、具体的事実に基づいて判断されるべき訴訟の主命題を指すものではない。この意味での具体的事実を示さない原告らの本件申立は不適法である。(その理由については東京高決昭和四七年五月二二日高裁民集二五巻三号二〇九頁を全面的に援用する)。しかるに原決定は、被告会社の右主張に対し「証すべき事実は、申立書の他の部分の記載を合せれば判明するから測定結果の数値の記載がなくても直ちにこれを以て違法とすることはできない」と判示するだけであつて「他の部分の記載」とは一体本申立書のどの部分のどのような記載を指すのか「他の部分の記載を合せれば」何が判明するのかについては、一切明らかにしていない。結局原決定は、証すべき事実としてどのような事実を摘示すればよいのかについては何も述べておらず、被告会社の主張に何ら実質的応答をしていないという外ない。

さらに、原告らが本件申立の対象としている磁気テープの記録内容は、前述のとおり二酸化いおうの環境濃度、風向・風速、第一火力の出力の測定結果としての数値であつて、原告らが証すべき事実として掲げる事実は勿論それに関連するような具体的要証事実が情報としてインプツトされているわけではない。磁気テープから得られるものは膨大な量(約四〇万個)の測定値のみであつて、これのみによつて原告が挙示する証すべき事実が立証されることは全くありえない。原告らは、本件磁気テープにインプツトされている測定記録を手がかりに、この数値を用い各種の計算、分析を行なえば原告らが掲げる証すべき事実に関係するような具体的な主張事実が発見できるかも知れないとの立場から、本件申立を行なつているのである。原告らの申立は、立証のためではなく、主張事実を作り出すために行なつているものである。具体的事実関係がわからないまま訴訟を提起し、訴訟手続のなかで文書提出命令の申立を行ない、相手方に資料を強制的に提供させ、その資料によつて主張事実を創造、構成する作業を試み、それに成功した場合には、その後にその資料を立証のためにも役立てようとするような訴訟追行が許されるとするならば、濫訴の弊が助長されることは明らかであり、さらには立証上の公平の観点から特に法廷に顕出することが要請される例外的な文書について設けられた文書提出命令制度の趣旨が没却されることにもなるであろう。いわゆる公害訴訟だからといつて、これを別異に解すべき理由はない。原審において被告会社が、文書提出命令は訴訟資料探知のために認められた制度ではなく、訴訟資料探知のために行なつた違法な原告らの本件申立は却下されるべき旨を主張したのは、このような趣旨からであるが、原決定がこの点につき何らの判断をも示していないのは明らかに不当といわねばならない。

二原決定は民訴法三一二条一号にいう「引用とは当事者が口頭弁論において自己の主張の助けとするため文書の内容と存在を明らかにすることを指す」と解し、被告会社は原決定別紙(一)1の二酸化いおう環境濃度の測定記録についてはその第四準備書面と添付の第一表一、二、第二表によつて、昭和四六年一月一日から昭和四七年一二月三一日までの期間、孝子、東畑、淡輪で測定を行なつたこととその測定結果とを数字をもつて主張しているから、本件磁気テープは同条一号に該当すると判断している。しかし、右第一表の一、二は昭和四六年度、昭和四七年度(なお、年度とは毎年四月一日から翌年三月三一日までの期間のことであり、同表は昭和四六年四月一日から昭和四八年三月三一日までの測定記録に基づいており、原決定は期間のとらえ方を誤つている)について、岬町内各測定点の年平均値、一時間最高値、一時間が0.1ppm以下の割合、日平均最高値を記載したものであつて、右両年度の全測定記録を記載したものではないし、また磁気テープにインプツトされた記録自体を表示したものでもない。磁気テープには二酸化いおう環境濃度が地点別に毎時刻にいくらであつたかということがその内容としてインプツトされているだけであつて、同表に記載したような年平均値等の各数値がいくらであるかということはその内容として記録されていない。同表の各数値は、被告会社において測定記録に基づき計算処理を行なつた結果として得たものである。また、第四準備書面添付の第二表は、昭和四六ないし四八年度までの各年度ごとに岬町内各測定点における二酸化いおう環境濃度測定値について濃度ランク別の記録時間数を示したものであるが、これも右期間の全測定記録を記載したものではないし、磁気テープにインプツトされた記録をそのまま表示したものでもない。第二表も、第一表一、二と同様被告会社において計算処理を行なつた結果として得たものである。

次に、原決定は、降下ばいじん量の測定記録についても、被告会社の第五準備書面の別紙四によつて、測定を行なつたことおよびその測定結果を数字をもつて主張しているから、右文書は民訴法三一二条一号に該当すると判断している。被告会社の第五準備書面の別紙四は、昭和三八ないし四八年度までの各年度ごとの三〇日当たり平均降下ばいじん量を示したものである。被告会社は昭和三八年一一月以降岬町内三地点において概ね三〇日前後の期間を単位に降下ばいじん量の測定を行なつてきた(なお、原決定は被告会社は昭和三八年一月一日から毎月のばいじん量の測定を行なつたことを主張しているとするが、被告会社はそのような主張はしていない)。右表は、右記録を基に、年度ごとに三〇日当たりの平均降下ばいじん量を計算しその計算結果を掲げたものであつて、被告会社は測定記録の原資料の数値をそのまま右表に記載したものではないのである。しかるに原決定は、以上の事実を看過し「被告は何れもその主張の助けとするために右の測定記録が存在し、その内容が右の通りであることを明らかにしているものと認めることができ右文書は同条一号に該当する」との判断を示したものであつて、その誤りであることはきわめて明らかである。

三さきの抗告人が、磁気テープは見読性を欠くという一点に徴しても文書(準文書)に該当しないことは明らかであると主張した(即時抗告申立理由補充書(その一)第二項)のに対し、相手方は暗号文書を例に挙げ、直接見読可能な形で表示されていることは文書の要件として必要ではない旨反論しているので、この点について若干補足的に論及しておきたい。

既に述べた如く、わが民訴法が証拠調の方法として、証人尋問、鑑定、書証、検証、当事者尋問の五種の方法を定めているのは、証拠としての情報の存在形態およびそれから得られる証拠資料の区別に対応したものであり、この内書証は、文書に関する証拠調方法であつて、裁判所に提出された文書につき、裁判官が視覚によつてそこに示されている文字や記号を認知し、その意味内容を証拠資料に採るための証拠調であつて、その対象をなす文書が法廷において裁判官が直接容易に見読することのできる情報媒介物であるところから定められた、簡易になしうる証拠調方法ということができる。

ところで従来、伝統的に、文書とは、文字その他の記号の組合せによつて、思想的意味を表現している有形物であつて、記号は電信符号や暗号の類でもよいといわれていることは事実である。記号とくに暗号については、一般に裁判官が見読によつてただちに意味内容を了知することは困難であり、その意味において書証に親しむものであるかどうか大いに疑問の存するところであるが、少なくとも専門家の専門知識の補助を得たならば、裁判官自身においてそこに表示されている暗号記号の意味を理解し、全体の意味内容を直接解読し確認することが可能であるという点において、拡張的には書証に親しみうる文書と解する余地があるともいいうるであろう。しかしながら、磁気テープにあつては、そこにインプツトされた電磁的信号は、如何に専門家の助けを得たとしても、裁判官自らその電磁的信号を視覚によつて認識し、その個々の記号のもつ意味に従つて全体の意昧内容を解読し確認することは不可能であつて、磁気テープにインプツトされた情報の内容を了知するには、全面的に専門家およびコンピユーターの働きに依存する外はないのである。すなわち、磁気テープに包含されている情報の認知については、裁判官が直接的に関与しうる部分は全く存しないのであつて、暗号文書において、少なくとも暗号記号自体は裁判官によつて認知され、専門家による知識の補充によつて、たとえ追試的ではあれこれを解読し確認することが可能であるのとは、大いに趣きを異にするのである。このように、たとえ裁判所に提出されたとしても、それに包含されている情報の認知は専門家およびコンピユーターに全面的に依存する外はなく、裁判官自らは追試的意味においても関与することが不可能な証拠調を、果たして書証ということができるであろうか。このような観点からするならば、磁気テープは暗号文書とも性質を大いに異にすることは明らかであり、相手方のこの点に関する主張は失当という外はない。

なお、相手方の論法をもつてすれば、思想的意味をもつた音声を電磁的信号に転換して記録した録音テープも、当然書証の対象たる文書に属することにならざるをえないであろうが、これは少なくともわが国の実務慣行に反することは明らかであるのみならず、従来の伝統的見解においても、音盤は記号によらない点で文書ではないとされている(すなわち、記号とは視覚によつて認識可能な形状を有するものでなければならず、電磁的記号は含まれないこと)のであるから、相手方の論法の誤りは、この点からしても明らかといわねばならない。

以上

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